心が正常ってどういう状態なの?私は大丈夫?

今回は、「心の状態」について考えてみたいと思います。

精神疾患やメンタル不調の人が増えているというニュースを目にします。

自分は大丈夫なんだろうかとちょっと心配になります。

そもそも、心や精神やメンタルが良好なのか不調なのか正直自分ではよく分かりません。

目に見えないですし、自分自身に問いかけても答えてくれません。

だからこそ、どういう状態が心の不調なのか?どういう状態が正常なのか? を調べてみました。

こころの健康の定義とは

WHO (世界保健機関)の定義では、健康とは「たんに病気でないというだけでなく、社会的・心理的・身体的に良好な状態」です。

こころの健康を判定するには

  1. 社会的
  2. 心理的
  3. 身体的

の3点からアプローチする必要があります。

社会的な面=就労状況や対人関係など
心理的な面=正確や考え方、ストレス状況など
身体的(生物学的)な面=脳や神経細胞など

ただ単に病気でない、というだけではこころが健康だと言えません。

バランスの取れた性格や考え方を維持し、心身両面の機能を良好に保ち、社会的存在として良好な適応状態を示していること」が本当の意味での健康です。

正常と異常の違い

身体に現れる症状であれば、精密検査を受けて異常が起こっている箇所を見つけることができます。ですが、メンタルに現れる症状(疾患)は、どこからどこまでが異常なのか非常に判定しにくいです。

正常=「特定の基準に合うもの」

異常=「特定の基準から逸脱しているもの」

と定義されます。

正常と異常を見分けるにあたり、以下の4つの概念が用いられています。

平均概念

平均を基準として、平均からどのくらい逸脱しているかによって異常の度合いを決める

※ただし、平均から離れているほど異常、と決めつけるのは極端な考え方になります。

価値概念

所属する社会や文化の中で特定の価値を生み出すものを正常として、価値を生み出さないものや価値を持たないものを異常とする

※ただし、就職をしていたら正常、していなければ異常という指標があっても、  社会的文化的背景によってはこれが当てはまらない場合があります。

適応概念

周囲の環境に適応していれば正常、適応できていないと異常とする

※ただし、本人側ではなく、環境側に問題があって不調に陥っているケースもあります。

疾患概念

疾患があれば異常、疾患がなければ正常とする」「症状の数や検査値がある基準を満たしていれば疾患であり、それを異常と判断する

※ただし、検査でいくつかの項目が引っかかってもそれが必ずしも心の異常を示すとは言い難いです。

このようにいくつかの概念があるものの、それぞれ不完全な部分があります。

「正常か異常かを論じることは大変難しいこと」です。

一つの基準だけで正常と異常を決めようとするのではなく、個人の特性を理解し、個人の置かれた状況や環境に照らし合わせて、総合的に判断する必要があります」。

また、正常なのか異常なのかという客観的な判断よりも「本人にとって本当に解決すべき問題がなんであるかを明らかにすること」の方が重要です。

上記4つの概念に当てはめて異常だと判断されても、本人からするととるに足らないことであれば、「こころの異常」が起こっているとは言い切れないのです。

精神科医の正常と異常の判断方法

米国精神医学会による診断基準(DSM-V)では、「精神(メンタル)疾患を判断するために次の2つがあること」が条件とされています。

  1. 「何らかの『症状』が存在している」
  2. 「その『症状』によって、著しい自覚的な苦痛がある」または「社会的、職業的に機能の障害を引き起こしている」

何らかの症状によって、自覚的な苦痛や機能障害が起きていることによってメンタル疾患」と判断します。

精神(メンタル)疾患が治ったと判断するには「症状が良くなったことだけを問題にするのではなく、本人が苦痛を感じなくなったかどうか、職場や家庭で本来の活動ができるようになったか」が重要です。

たとえ症状が残っていたとしても、本人がそれにうまく対処できるようになり、あまり苦痛を感じなくなったり社会生活に支障がなくなったりすれば、精神(メンタル)疾患が改善したと言えるのです。

まとめ

心の状態は「社会的」「心理的」「身体的(生物学的)」といった様々な側面から見る必要があります。

正常か異常かを判断する際、「平均概念」「価値概念」「適応概念」「質感概念」といった考え方がありますが、1つの概念で判断するのではなく、個人の特性や置かれた環境に配慮して総合的に考える必要があります。

「何らかの症状が存在していて」「その症状によって著しい自覚的苦痛がある、社会的・職業的に機能障害を起こしている」ことが精神(メンタル)疾患の判断条件です。「症状が良くなったことだけでなく、本人が苦痛を感じないか、職場や家庭で本来の活動ができるか」が症状改善の目安となります。

参考文献

『ケアストレスカウンセラー公式テキスト』 門倉真人・村上純子(著) 一般社団法人職業技能振興会(発行) 有限会社小池企画印刷(2020改訂)

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